生成AI活用事例:一枚のビジュアルが関係者の心を一瞬でつかんだ!
株式会社ノイズ・バリュー社・専務取締役 青木元氏に聞く
ノイズバリュー社は、沖縄県内に拠点を構え、マーケティングやブランディングを通じて地域活性化を支援しており、経済産業省から地域未来牽引企業に認定されています。
取材:NPO法人)ITコーディネータ
ITコーディネータ沖縄
広報委員会   新井良直
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▼ Podcast
以下の Podcast は、まるでラジオ番組のように聞こえますが、AIの自動生成のため、一部読み間違い等があります。予めご了承ください。(で再生)
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社名の由来
「ノイズ・バリュー」という一見すると矛盾するような組み合わせの名前の由来は、社会の見落とされがちな情報(ノイズ)を拾い上げ、価値(バリュー)に変えていくという企業理念が込められています。
「マーケットの中にある見過ごされがちな情報をノイズと呼び、それをマーケティングで拾って価値あるものに変化させる。それが私たちの名前の由来です」と専務取締役の青木元氏は語ります。
「攻め」と「守り」のデジタル戦略
同社のデジタル戦略は「バックオフィスの業務効率化」という守りの側面と、「フロント業務における生成AIの活用によるクオリティ向上」という攻めの側面の二本柱で進められています。生成AI活用の目的は、それによる業務効率化で浮いた時間を、よりクリエイティブで価値ある業務に振り向けるための取り組みです。
中小企業における生成AIの実践的アプローチ
青木氏は、生成AIの活用において独自の視点を持ちます。どのような取り組みをしているのか、その具体的な内容と成果についてお話を伺いました。
「メロンツリー・プロジェクト」
子供の自己肯定感向上と、宮古島メロン農家のブランディングを結び付けた!
ノイズ・バリュー社の生成AI活用の実例として、特に印象的なのが宮古島のメロン農家と児童館(解困プロジェクト)のコラボレーション事例です。このプロジェクトは、生成AIの活用がいかに関係者の合意形成を促進し、創造的なアイデアの実現を加速させるかを示す好例となっています。
-「メロンのクリスマスツリー」アイデアの誕生
「打合せの際、「メロンのクリスマスツリー」を制作するというアイデアが生まれました。このアイデアを関係者に伝える際、口頭での説明だけでは伝わりにくいと感じ、その場でChatGPTを使って、メロンで作ったクリスマスツリーのイメージ画像を生成したんです。目で見える具体的なイメージがあると、皆さんの食いつき方が全然違う。会議は一気に盛り上がり、やろう、やろうと、その場でプロジェクトが動き出しました」
このプロジェクトは子どもの貧困問題の根底にある「自己肯定感の向上」にも取り組む「解困プロジェクト」と連携。子どもたちが描いた絵をオーナメントにしてメロンツリーを飾り、使用後のメロンはピューレに加工して地元レストランで提供するという循環型の取り組みへと発展しました。
この一連の取り組みは補助金を活用せず、関係者の「手弁当」で行われ、想いに共感した人々の自発的な協力によって、プロジェクトは成功を収めました。
このメロンツリープロジェクトは、地域の特産品振興、子どもの貧困問題への取り組み、そして環境配慮という複数の社会課題を、生成AIという最新技術の力で結びつけた画期的な事例と言えます。
ノイズ・バリュー社が掲げる「見過ごされがちな価値に光を当て、それを価値に変える」という理念が、見事に形になった事例です。
社内業務での生成AI活用
生成AIの活用は日常業務にも浸透しています。報告書作成では、以前なら数時間かかっていた追加原稿の執筆が、AIの力で15〜30分で完了する事例もありました。
「本当に4分の1から5分の1の時間短縮ができています」と青木氏は効率化の実感を語ります。
最近は自社の企画書をAIに読み込ませて評価基準を与えて点数をつけてもらい、例えば70点と回答された場合、「100点にするにはどうすれば良い?」と質問すると、ブラッシュアップされた答えを生成してくれるといった使い方も試しています。ただし、青木氏はAIを万能視していません。
「生成AIを使うこと自体が目的ではなく、あくまで道具の一つです。普段の活動のクオリティやスピード感を高める視点で取り組んでいます」
また、国際協力機構(JICA)の研修でも、言語の壁を超える手段としてAIの画像生成機能を活用しています。
組織への浸透と学びの共有
社内では、週に一度の全体ミーティングで新しい生成AIツールの活用結果を共有する文化が根付いています。興味のある社員が積極的に新しいツールを試し、そのノウハウを組織全体で共有していくことで、DXへの推進力を高めています。
現在はChatGPT(有料版)、Notebook LM、Feloなど様々なツールを使い分けています。それぞれの特性を理解し、最適な場面で活用することを心がけています。
人間の創造性とAIの融合:ノイズ・バリュー社の理念
同社の企業理念「ノイズバリュー」(見過ごされがちな価値に光を当て、それを価値に変える)は、生成AIの活用においても重要な意味を持っています。
「完璧な効率化だけを目指すのではなく、あえて『説明しきれないノイズ』をデザインに取り入れることで、人間ならではの表現を生み出すことを大切にしています。AIには代替できない人間の創造性を活かすことが、私たちの強みです」と青木氏は語ります。
生成AIに全てを任せるのではなく、人間の専門知識や判断によるブラッシュアップを重視する姿勢は、同社の生成AI活用における特徴的なアプローチと言えます。
まとめ:目的を明確に、柔軟に、そして人間中心に
ノイズ・バリュー社は、自社での生成AI活用で得たノウハウを、クライアントである中小企業に伝えています。
「地方を作ることは日本を作ることだと私はいつも言っています。地域の中小企業のDX推進をサポートすることで、地域経済の活性化に貢献していきたい」と青木氏は力強く語ります。
ノイズ・バリュー社の生成AI活用の取り組みからは、以下のような示唆が得られます。
1
目的意識の明確化
「何のために生成AIを使うのか」という目的を明確にすることが重要
2
段階的な導入
「守り」と「攻め」の両面からバランスよく進める
3
トライアンドエラー
様々なツールを試しながら自社に合った活用法を見つける
4
学びの共有
経験を組織内で共有し、全体のスキルアップにつなげる
5
人間中心のアプローチ
AIはあくまでツールであり、最終的な判断や創造性は人間が担う
青木氏は最後にこう締めくくりました。「時間効率を高め、本来得意とする業務に集中するための手段として生成AIを活用する。そのシンプルな考え方が、私たちのDX推進の原点です」
中小企業の生成AI活用において、形式にとらわれず実質を重視するノイズ・バリュー社の姿勢は、同様の課題に直面する多くの企業にとって、貴重な道しるべとなるはずです。
利き手:沖縄生成AI研究会代表・ITコーディネータ沖縄広報委員長 新井良直